ダージリン急行(THE DARJEELING LIMITED)を観た

ダージリン急行 [DVD]

ダージリン急行 [DVD]

監督:ウェス・アンダーソン
脚本:ウェス・アンダーソン,ロマン・コッポラ,ジェイソン・シュワルツマン
出演:オーウェン・ウィルソン,エイドリアン・ブロディ,ジェイソン・シュワルツマン

 これはネタバレとかあまり考えずに書いているので自己責任で続きを参照されたい.(本作品はあらすじが全てわかったからといって魅力が落ちるタイプのものではないと思うが一応.)

 本作を一言で表すと,仲違いした三兄弟がでインドを旅するという映画.旅の足が表題「ダージリン急行」なる列車である.三人とも性格に難ありで他愛のないことで衝突を繰り返すようすは,何度みても可笑しい.キャラクターに依存した笑いだけでなく,センスあるユーモアが随所に配置されており,ずっとニヤニヤして観られた.また,映像が非常に美しい.インドの非日常さを感じさせる要素がクドくない程度に含まれており,インドを好きになれる.

 本作を観て思ったのは,「家族といえども分かり合えるとは限らないし,また,分かり合う必要もないということ」三兄弟の性格はてんでバラバラである.衝突するたびにいくつもの協定を作ったり,食堂車で各人の注文を頼んであげるなどして,兄弟をまとめようとするがいまいち求心力のない長男.(後にこれが母親譲りのものだとわかるのだが.)次男は親父のモノを私物化し非難され,三男はマイペースで相当な漁色家.それぞれが「これは秘密だぞ」として打ち明けた話がすぐに三人目に伝わり,いさかいが起きる.しかし,旅中の様々な出来事を通じて成長し,円熟した三人はそれぞれ,喧嘩していた部下と仲直りしたり,妻と和解したり,別れた彼女と会うことになる.

 「家族といえども分かり合えるとは限らないし,また,分かり合う必要もないということ」とは,つまり「家族であることは,それだけで価値があり,また家族であることは,各人がうまく調和することを担保しない」ということを指す.互いの思想や行動原理などを分かり合うなどという次元よりはるか高みで家族は繋がっているのだ."たかが"思想の行き違いで疎遠になってしまうのは忍びない.
その点を勘違いして不幸になる家庭のなんと多いことよ.家族,それはプライスレスなのだ.

 また,家族がそばにいないことがどういうことかを考えさせられた.私は四人兄弟の末っ子であり,兄弟はみな結婚して子供もいる.ホイットマン三兄弟ほどではないにせよ,いつも気軽に会えるわけではないので,四人が揃う機会を大事にしたい.

 家族の意味やあり方の是非についてしっかりと考えさせられる部分があり,ユーモアや映像の美しさを堪能でき,一人で見ても大勢で見ても楽しめる映画だろう.ちなみに私は自室で一人で観た.


 本作のプロローグ的作品である「ホテル・シュバリエ」でのナタリーポートマンの肉体が凄まじかった.女豹と言うか,悪魔の体と言うか.とにかく人間離れしていて凄まじい.youtubeにあったのでご紹介しておく.Hotel Chevalier by Wes Anderson - YouTube