旅先での日本酒バーがこの世の終わりだった

美味しい店に当たってよかったなって気持ちを合算したものと,最悪な店に当たって嫌な気持ちになる気持ちを合算したものだと,多分前者の方が大きい。そういう意味では各種ご飯屋さんwebサービスは私にとっては有益である。表面上では。最近,といってもここ数年,安くてうまくて汚い店にはまっている。月に一度美味しい(客単価1万円くらい)の店に行く試みふいに途絶えて久しいのと,飲みに行く友人たちと共にハマった店があって,そこに通っているせいだ。また,よく昼食を採っていた安くて普通で汚い食堂で夜一人酒をすることも覚えた。だから,気軽さだけが売りの,電子レンジが主力の調理器具のような店に行くことはない。その傾向はこの一年で加速していると言えるだろう。京都や大阪の安くて美味しい店をまだまだ開拓したいし,来年以降はお江戸のお店を開拓したい。よく知らないなりに,上野や押上や神田が好きであると自覚している。

さて,先日,福岡の中州に飲みに行った。食事は済ませてあって,日本酒をのみたいということで複数探したのだが,これが難しかった。一番人気であろう店に電話したら予約でいっぱいだったので,二番目だか三番目の店を尋ねた。そこが最悪だった。まず入って思ったのが,小奇麗なカウンターで酒も多数並んでいて,好感を持てる店構えであったこと。ただ,ここからが悪さの連続で,悪さの合わせて一本と相成った。まずは,ガールズバーみたいなちゃらちゃらした姉ちゃん二人が接客していて,その二人に不思議な程高圧的に接する非モテっぽいサラリーマン達のやりとりを間近で見せられたこと。もう一点,1/4合くらいの,本当にヤクルトより小さい器の冷酒で800円くらいと,不当に高かったこと。800円のヤクルトって,なんぼほどビフィズス菌が入ってたらいいんだ。1合で800-1,200円くらいを想定していたので,度肝を抜かれた。どちらかなら結構である。合わせて一本。この合わせ技により「この不当な高さはガールズ料金が込み込みだからだ」という説得力のある推論が得られて,そこから不快感が臭ってきた。ガールズを必要としない私たちがガールズ料金を支払ってまで高い酒を飲む必要はない。また,そのことが食べログに記載されていないことにも腹が立った。

内装と置いてる酒の豊富さはなかなかのものだったし,いぶりがっこ美味しかったのだが,なんともまあつらい思いをした。食べログぐるなびホットペッパーの功罪である。中途半端な情報は,全く情報が無いことより恐ろしく,人を不幸せにすると思う。日本酒を飲みたくなって,無難なチェーン店であるところのウエストや寿司将軍に行けばいいものを,インターネットでの検索によって知る由もなかった店に行ってしまうのだ。もちろん,主に「こんな良い店,インターネットなしには知ることはなかっただろう!わーいわーい」という声が支配的なのだろうが,5回分くらいのこの種の喜びと,1回のこの世の終わり店での落ち込みは等価である。ホームランはいらない。三振を避けよう。各種ご飯やさんサービスは,そういう観点が弱いと思う。この世の終わりの店には行かないでおこう。やよい軒吉野家と数軒を大事に抱えて,しばらく生きていこう。